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少年誌は「なつ漫」の宝庫(4) |
戦後の子ども漫画は、月刊誌を主流としてスタートした。
手塚治虫の登場と、彼に刺激された戦後の漫画家たちが、新たに創刊された多くの
漫画雑誌で活躍する。
そして、私たちの「なつ漫」の多くが、この頃に生まれた。
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子ども漫画大ブレークの時代 |
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●寺田ヒロオ
「スポーツマン金太郎」はほのぼのとした野球漫画だった。
赤ちゃんみたいな金太郎が、巨人軍に入団して強打者の王選手や
長嶋選手と一緒に野球をやる話だった。
ピッチャーの金太郎が投げると、友だちの熊がキャッチャーで
ボールを捕っていた。
桃太郎も登場してキジやサルを連れて南海に入団していた。
寺田ヒロオの「暗闇五段」は、視力と記憶を失った柔道家
倉見五段が主人公だった。
いずれもまじめな作りで、作者の人間性が伝わってくる漫画
だった。
寺田ヒロオは、トキワ荘で石ノ森章太郎や赤塚不二夫に影響を
与えた人でもある。
●関谷ひさし
寺田ヒロオと同じころに活躍した漫画家に、関谷ひさしがいる。
関谷ひさしの「ストップ!にいちゃん」は、雑誌「少年」が休刊
になる最後まで、手塚治虫の「鉄腕アトム」とともに、「少年」
を支えていた漫画である。
なんとも楽しい、そして優しさが伝わってくる漫画だった。
最近では、このような漫画は雑誌で見なくなってしまった。
出版社の考えもあるのだろうが、こうした漫画があってもよいの
ではないかと思う。
中学生の南郷勇一と弟の賢二、さらに隣に住む勇一の同級生
サチコが繰り広げる学園漫画だった。
勇一はスポーツ万能で勉強優秀だがサチコにだけはからっきし
弱い。
いかにも学園漫画っぽい設定である。
話も、平凡な普段の日常生活を描いている。
それでも、面白いものは面白いのだ。
●貝塚ひろし
「くりくり投手」は福井英一の「イガグリくん」の影響を受けて、
柔道漫画を野球に置き換えて描いたといわれている。
主人公の栗山栗太郎の、ストイックな性格が思い出される。
曲がったことが大嫌いで、心優しい少年だった。
当時は、こうした分かりやすい性格のキャラが多かった。
貝塚ひろしは、野球漫画が得意で、「ミラクルA」という野球
漫画も描いていた。
この漫画は、寺田ヒロオの「スポーツマン金太郎」のように、
主人公の郷投手が巨人軍で活躍するという内容だった。
巨人軍の秘密兵器・郷投手の、「秘球ジェット快球」は凄かった
ぞ。
ところが、この秘球ジェット快球は、足のけがのために1試合で
たった2球しか投げられなくなってしまった。
その後、「第二の秘球スモーク快球」というのを編み出すんだ
よね。
「ゼロ戦レッド」も懐かしい漫画だ。
「0戦太郎」や「紫電改のタカ」「大空のちかい」同様、子どもの
頃にワクワクしながら読んだ記憶がある。
●川崎のぼる
「野球漫画」といえば、誰もが「巨人の星」とくるだろう。
それほど、みんなが夢中になって読んだ漫画である。
また、アニメ化されていたので「巨人の星」を知らない人は
ほとんどいないだろう。
私も野球をやっていたので、この漫画の虜になった。
TV放映のある日は、部活が終わるとすぐに帰宅して、テレビの
前でかじりつきになって観ていた。
面白かったなぁ。
主人公星飛雄馬が、父親から装着された大リーグボール養成
ギブスは凄かった。
あれで豪速球が投げれるなら、と私もエクスパンダーという
スポーツ器具を代用して試したことがある。
ところが、バネが皮膚を挟んで痛くて痛くてやめてしまった。
それに肩が痛くなったのを覚えている。
「いなかっぺ大将」は劇画タッチのギャグ漫画だった。
青森から東京へやって来た大左エ門(通称・大ちゃん)という
子どもが主人公で、柔道が得意だった。
動物の言葉が話せる大ちゃんが、猫のニャンコ先生に
「キャット空中3回転」を伝授されるんだよね。
●水島新司
「巨人の星」同様、野球好きは必ず読んでいるのが「ドカベン」で
ある。
それまでは野球の主人公といえば「ピッチャー」か「バッター」
だった。
ところが、野球通の水島新二は、「キャッチャー」という、
どちらかというと地味なポジションにスポットを当て、主人公に
据えたのだ。
ドカベンこと山田太郎は、明訓高校のキャッチャーで強打者で
ある。
彼の剛打と軟投投手里中の活躍で、甲子園で大活躍する漫画
だった。
また、脇役がよかった。
いつも葉っぱをくわえている岩城は、ときに主人公を食って
しまうほどの活躍っぷりだった。
「あぶさん」では、代打にスポットを当てて描いていた。
●石川球太
当時、動物漫画の第一人者だったのが石川球太だ。
「狼少年ケン」や「牙王」「魔犬ムサシ」「動物記」「銀狼伝」
など、たくさんの動物漫画を描いている。
少年サンデーに連載された「原人ビビ」は古代を扱った漫画で、
生きるために殺し、食べるために殺すといった、少年誌らしく
ない内容だった。
獲物を求めて流浪する原人たちがいて、白い牙と呼ばれる狩人の
一族に、白い肌の不思議な子どもビビが生まれた。
その子どもを主人公とした漫画だった。
●永島慎二
「漫画家残酷物語」は、発売当初に読んだわけではない。
大学を卒業し、永井豪先生のダイナミックプロダクションに
入ってから、西早稲田の本屋で買って読んだ。
40年前である。
当時は、漫画家を志した上京してきたばかりで、「漫画家残酷
物語」を読んでいたら、登場人物たちと自分がダブっちゃって、
思わず泣いてしまったことを思い出す。
この漫画は、永島慎二自身の体験を漫画化したもので、内容が
事実だったから説得力があった。
おそらく、この漫画を懐かしく思う人は少ないと思う。
しかし、私にとっては、1ページ1ページが、すべて懐かしい
思い出なのだ。
この漫画を再読するとアシスタント時代のことが思い出される。
●村野守美
大学時代に夢中で読んだのが村野守美の漫画だ。
そして、私がもっとも影響を受けた漫画家である。
ダイナミックのアシ時代には、村野守美の単行本をすべて買い
揃えて読んだ。
青林堂から出版された、通称「弁当箱」と呼ばれたハードカバー
の本もすべて買って読んだ。
しかも、先生のサインの入った限定本まで注文して買った。
正直、私は村野守美オタクである。
そのオタクが進めるナンバーワンの漫画は、「草笛のころ」だ。
ごく平凡な田舎のとりとめもない話だが、琴線を激しく揺さぶら
れた。
読んでいると、田舎の草の香りが漂ってくるのだ。
広がる雲が、優しく大地を包んでいく。
そんな、叙情的な雰囲気を醸し出す漫画である。
「ほえろボボ」は、野良犬の子犬が、厳しい社会の中で成長しなが
ら生きていく様子を描いた漫画だ。
人間社会を犬社会の置き換えた内容だった。
なにしろ、絵がいい。線が綺麗なのだ。構図もいい。
話もいい。
すべて大好きである。
●園山俊二
もう一人、私が大好きでたまらない漫画家がいる。
園山俊二だ。
「ギャートルズ」は、弱肉強食の原始時代にバイタリティーあふれ
た人間の祖先たちの生活を描いた漫画だった。
単純な線で描くナンセンスギャグでめちゃくちゃに面白かった。
今でも、登場人物たちの叫び声が聞こえてきそうである。
マンモスの足の輪切りなど、今でも園山俊二の描く絵ははっきり
と覚えている。
強烈な絵だったなぁ。
「ぺエスケ」や「ガタピシ」もよかった。
銀座の松坂屋だったと思うが「園山俊二展」を見に行ったことが
ある。
たくさんの人が見に来ていた。
そこで、彼の原画が展示されていたのだが、切り貼りの原画が
あったことを覚えている。
「ギャグ漫画なんだし、切り貼りなどせずに描き直すしても、
さほど時間もかからないだろうに」と、思ったものである。
それほど、園山俊二という人は、自分の描いた絵を大事にして
いたのだろう。
そのときに買った「ぺエスケ」の文庫本全8巻が、本棚の目立つ
ところに入っていて、今では娘さくらの愛読書になっている。
●谷岡ヤスジ
園山俊二に勝るとも劣らないほど強烈だったのが谷岡ヤスジだ。
「ヤスジのメッタメタガキ道講座」は「少年マガジン」に連載され
たが、少年誌に載せるにはあまりにもハチャメチャで強烈
だった。
屋根の上で「鼻血ブー」とか「アサー」と叫ぶシーンは、もの
すごく印象に残っている。
ギャグの鬼才だと思う。
●つげ義春
つげ義春は、大学時代に読んだ。
子どもの頃の「なつ漫」ではないが、読んでいて無性に古めか
しいような、懐かしい感じのする絵だった。
ところが、途中から絵のタッチがどんどん変わっていった。
「ネジ式」は有名だが、さほど感動するようなものではなかった。
むしろ、「李さん一家」や「無能の人」が面白い。
とくに、「無能の人」はよかった。映画化もされた。
つげ義春の漫画は、私の大事な愛読書である。
何度読んでも、新たな感動があるのだ。
●小沢さとる
「サブマリン707」は、海上自衛隊の潜水艦の活躍を描いた漫画
だった。
それまで、海をテーマに描いた漫画家は少なかったので、もの
すごく新鮮な気持ちで読んだ記憶がある。
「サブマリン707」というのは、海上自衛隊の旧式潜水艦
707号「うずしお」のことで、速水艦長は大戦中に伊号潜水艦
で活躍した経験がある。
サブマリン707号は太平洋で起こる怪事件を解決するために
戦う。
たとえば、ムー大陸を支配したアメリカの潜水艦やU結社という
世界征服を企む組織が相手だった。
「青の6号」も、同じように潜水艦物だった。
●バロン吉本
バロン吉本も潜水艦漫画を描いている。
「どん亀野郎」は、リアルな描写が素晴らしかった。
海もよかったなぁ。
しかし、バロン吉本といえば、なんといっても柔道を扱った
「柔侠伝」である。
「柔侠伝」「昭和柔侠伝」「現代柔侠伝」「日本柔侠伝」と
シリーズになっていた。
私の知り合いが、バロン吉本のアシスタントをしていた。
●久松文雄
「スーパージェッター」はカッコよかった。
「流星号応答せよ!」というセリフは懐かしい。
30世紀の未来からやってきたタイムパトローラー・ジェッター
が、流星号の時間渡航装置が故障したために戻れなくなって
しまったのだ。
久松文雄の描く絵はシンプルで奇麗だった。
どちらかというと、手塚治虫に似ていたように思う。
個人的には手塚治虫より久松文雄の描く人物が好きだった。
暖かかったように思う。
「冒険ガボテン島」は、南海の無人島で力強く生き抜く少年たちの
活躍を描いていた。
「十五少年漂流記」をモチーフにした漫画だったが、「スーパー
ジェッター」より好きだったなぁ。
男の子って、基本的に冒険が好きだよね。
●松本零士
「ララミー牧場」は松本零士の漫画でもっとも好きな漫画だった。
西部劇のシーンがものすごい迫力で展開されていた。
当時としてはマイナーだったかもしれないが大好きだった。
漫画の中の白っぽい空間が印象に残っている。
もちろん「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」も大好きだ。
「宇宙戦艦ヤマト」はTVアニメ化され、波動砲という武器や、
ワープという時間を跳ぶ装置が話題になった。
松本霊士は、たくさんのSF漫画を描いている。
●望月三起也
少年キングで連載した「ワイルド7」はバイクアクションが
凄かった。
「悪を討つためには悪をもって制す」、これがモットーに警察
組織内に作られた無法者部隊が「ワイルド7」だった。
ということで、メンバー全員が札付きのワルである。
そのワルが7人いる。
だから「ワイルド7」である。
その7人が白バイ警官となり、法では裁ききれない悪党を
やっつけるという筋立てだった。
「秘密探偵JA」も面白かったなぁ。
絵が上手いのには関心させられた。
望月三起也は、サッカー好きでも知られている。
●本宮ひろし
少年ジャンプに連載された「男一匹ガキ大将」は、ものすごく
大きなスケールで「男」を描いていた。
絵はさほど上手くはなかったが、荒々しい線が逆に発展途上の
「男」を 際立たせていたように思う。
当時、急速に売り上げを伸ばした少年ジャンプだったが、
「男一匹ガキ大将」の貢献大であったことは間違いない。
私が感心したのは少年誌で「商売」について描いていたことだ。
とくに株などについて少年誌で展開するとは…、う~んスゴイ。
●さいとうたかを
「無用ノ介」は、浪人の賞金稼ぎを描いた劇画だった。
リアルな時代劇でとくに刀の動きの描き方に特徴があった。
背景も上手いし、ものすごく臨場感のある漫画だった。
当時の週刊少年マガジンの柱は「巨人の星」「あしたのジョー」
そして「無用ノ介」だった。
いずれも、面白い漫画だった。
「無用ノ介」は、隻眼の賞金稼ぎだった。
賞金稼ぎといえば西部劇を想像するが、この漫画も話の組み立て
は西部劇そっくりだった。
砂ぼこりが舞い上がって、村の外れから悪党がやってくる、
などというシーンはまるで西部劇だった。
野良犬が登場して、その後のシーンで賞金稼ぎの無用ノ介が登場
する。
こうした演出も西部劇だ。
TVでは、無用ノ介を伊吹五郎が演じていた。
「サバイバル」は、大地震で文明が崩れ去った中をサトルという
少年がどう生きていくかというサバイバルを扱った漫画だった。
すごくタメになった。
●藤子不二雄
藤子不二雄はたくさんの名作を描いてきた。
「忍者ハットリくん」は、伊賀の里からやってきたハットリ
カンゾウという少年忍者が主人公で、「ケン一」氏の家に居候
していた。
そして、忍法を使って様々な事件を解決していくという漫画
だった。
しかし、話の根底は友情漫画である。
藤子不二雄の漫画に共通するのは友情を描くということだった。
それは「おばけのQ太郎」や「パーマン」「怪物くん」
「どらえもん」など、ほとんどの藤子漫画に共通している。
「おばけのQ太郎」は、Q太郎というお化けが主人公で、アメリカ
お化けのドロンパというのが出ていた。
「パーマン」は、マントがないと空を飛べなかった。
それにしても、藤子不二雄はヒット作が多い。
そして面白い。
多くの読者が藤子不二雄を支持するのは、彼ら(2人の合作)が
描く漫画が友情漫画であって、底流に「優しさ」があるからだと
思う。
漫画はかくありなん、と思う。
●その他
たくさんの漫画と漫画家を紹介してきた。
まだまだ全然書き足りないが、キリがないのでここで区切りを
付けたいと思う。
また、少女漫画家たちもたくさんの「なつ漫」を描いているが、
私が読んだものとしては、どうしても少年ものが多くなって
しまう。
懐かしい少女漫画といえば、「アタックナンバー1」や
「金メダルへのターン」「ベルサイユのばら」などたくさんある。
後日、機会があるごとに紹介していきたいと思う。
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軍国主義に利用された戦前漫画
貸本漫画が戦後に活力を与えてくれた
新聞漫画と政治漫画
少年誌は「なつ漫」の宝庫(1)
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