HOME > 漫画と出版業界の昨今 | |
紙の文化からデジタルに移行してきたことから、出版業界は斜陽産業などと言われています。しかし、紙は人類の遺産でありデジタルにはない暖か味があります。決してなくなることはないでしょう。漫画はそうした紙文化に支えられて成長してきました。 |
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目次 | |
1.出版業界の変化について 1-1.かつて紙は文化の担い手の主流だった 1-2.デジタルが主流になる 2.最近の出版業界は 2-1.宣伝費がない 2-2.新たな企画で勝負できない 3.漫画はどうか? 3-1.デジタルコミックは出版社を離れて独自の展開を見せるか 3-2.漫画は生命力のある文化 |
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出版業界の変化について | |
かつて紙は文化の担い手の主流だった かつて、学生たちの愛読書が岩波新書などの新書版だったころがありました。戦後の経済成長期を経験し、学生たちが社会構造の矛盾に対して声を上げていた頃です。あちこちの大学で学生運動が起き、彼らはお互いの主義に対して持論をぶっつけて議論しあいました。 まさに紙の文化が隆盛を迎えていた頃です。Gパンのポケットに新書を入れて歩くのがファッションでした。当時の漫画も学生たちの考えに呼応したように、白土三平氏の「カムイ伝」などに人気がありました。「カムイ伝」は江戸時代の百姓を主人公にして、身分制度の矛盾をテーマにスペクタクルな展開を見せて大人気でした。 学生たちは紙の本が大好きでした。新書版も漫画もすべて紙の本でした。紙の文化は大勢の支持を受けながら時代とともに現代まで続いてきたのです。 デジタルが主流になる しかし、ワープロやパソコンの発達によって、「活字を書き読む」という文化から「活字を打ち読む」文化へと変わってきました。「書く」のは紙ですが「打つ」のはキーボードです。つまり、アナログからデジタルに移行したことによって、文化の担い手が「人」から「機械」に替わってきてしまったのです。 現代はほとんどデジタルの時代です。したがって、紙を扱う出版社は苦境に立たされています。出版社が生き残るにはデジタルの電子書籍などに移行していく必要があるでしょう。 もちろん、紙の暖か味や手触りなどが好きな人も多いので紙の本がなくなることはないでしょう。しかし、紙は主流ではなくなると予想します。 |
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最近の出版業界は | |
編集者は元気がありません。ノルマのように本を作り、完成して出版したらすぐに別の著者を探して新しい本を制作します。幾度もその繰り返しです。 宣伝費がない しかし、本はなかなか売れません。まず宣伝費がないから新刊ができても広告できません。それでは、なかなか売れないのです。書店の店頭にドンと平積みされるような著書はなかなか作れません。 新な企画で勝負できない それだけではありません。出版社は新たな冒険ができないのです。思い切った企画で勝負したいと思っても、そうした企画にはリスクが伴います。今の出版社にはそうしたリスク覚悟で勝負するだけの体力がないのです。数本こけたら企業としての浮沈に関わるくらい深刻なダメージになります。 そこで、あちこちの出版社が採用する新たな戦術として電子書籍があります。紙がダメならデジタルで、というわけです。しかし、どこの出版社も同じようなことを考えますから新鮮味がありません。結局、電子書籍化してみたところでさほど儲かるわけでもありません。 |
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漫画はどうか? | |
デジタルコミックは出版社を離れて独自の展開を見せるか それでは、かつてバカ売れしていた漫画はどうでしょうか。週刊誌で毎回600〜700万部売れていたころありました。漫画を売って儲けようではありませんか。 しかし、その漫画もなかなか売れなくなってしまいました。漫画がどうこう言うより紙の本自体が売れないのです。それでも、漫画はとんでもない売り上げを記録することもあり、今でも打ち出の小槌のようなものです。何が売れるか分かりませんが、毎年バカ売れする漫画が現れます。 ところで、漫画は電子書籍に対応しやすいのでデジタルコミックはたくさん出るようになってきました。しかも、出版社だけでなくデジタルコミック専門に立ち上げた企業や団体などもデジコミを扱うようになってきたのです。 漫画は生命力のある文化 これは、漫画にとって新たな流れですね。光明であると考えます。こうした流れがどんどん加速していくと思われます。コミックマーケットなどに代表されるように、漫画は非常に庶民的であり、かつ生命力の強い文化なのです。出版業が低迷しても漫画は独自の飛躍を見せるかもしれません。大いに期待したいと思います。 漫画は文字と違ってビジュアルですから、元来デジタル化に適しています。今までは活字と同じ書籍という媒体で流通していましたが、これからは電子書籍やSNSなどで扱われることが増えていくでしょう。 もちろん、すべての漫画がデジタル制作されるわけではなく、現在の形態を継承しながら書籍として残ってものもあるでしょう。漫画は常にたくましくありたいものです。 |
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